市立青梅総合医療センター

肺がんの手術~VATSとは~

2021年07月16日

呼吸器外科医長 今井 紗智子

おなかのカメラを用いた腹腔鏡手術はラパロ(laparoscopyの略)と呼ばれますが、胸のカメラを用いた胸腔鏡手術はVATS(バッツVideoAssisted Thoracic Surgeryの略)と呼びます。呼吸器外科では肺や縦隔にできた病気に対する治療を行っており、2020年春から当院でのVATSの適応疾患をひろげました。今回は肺がんの手術治療についてご紹介します。

肺がんについて

肺がん=ヘビースモーカーの病気と思われがちですが、最近ではタバコを吸わない人にも肺がんが増えています。過去10年日本人のがん死亡率第一位を肺がんが占拠しています。タバコを吸う人も吸わない人も、年一度は検診でレントゲン検査をお勧めします。

肺がんの治療

肺がんに対する治療の基本は「手術できる肺がんは切除をして、更に必要なら薬物治療や放射線治療を行う」です。近年重粒子線などの治療法も出てきていますが、まだ十分なデータと結果が出ていません。肺がんに対する手術は「どれだけ肺を取るか」「どうやって肺を取るか」がポイントです。

「どれだけ肺を取るか」

肺がんの標準的な治療は肺葉切除といって、がんが存在する肺葉を切除し、周囲のリンパ節を郭清します。非常に早期段階の肺がん(非浸潤癌)と考えられる場合は、縮小切除(区域・楔状切除)を選択することもあります。当院でも早期の肺がんや呼吸機能が低い場合には縮小切除を選択しています。

「どうやって肺を取るか」

以前は開胸手術が標準術式で、術者と助手がじかに胸の中を見て触って手術をしていました。少なくとも術者の片手がすっぽり胸の中に入る必要があるので、創(きず)は15cm前後で、場合によっては肋骨を折って手術をしました。今でも進行した肺がんなどはこのような開胸手術が選択されます。

ここ20年くらいで器具の進歩と呼吸器外科医たちの努力により、VATSが肺がんの標準治療となってきました。VATSは術者も助手もカメラで映し出された胸の中の映像を見ながら、棒状の道具を使って手術をします。道具が出し入れできる大きさの創で済むので、4cm程度の創が1箇所、1.5cm程度の創が2箇所で、肋骨を折ることなく手術ができます。創が小さいので痛みや体への負担が減少します。VATSでも「どれだけ肺を取るか」は開胸手術と変わらず、術後の再発などの治療成績もほぼ同等と考えられています。

今後10年はロボット手術の発展が見込まれます。肺がんに対するロボット手術も始まっていますが、VATSを超える利点を見出すには、まだまだ我々呼吸器外科医の努力が必要そうです。

当科では看護師などの病棟スタッフ、関係各科、手術部などと協力し、手術や入院生活を安全に安心して受けていただけるように心がけております。

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