市立青梅総合医療センターのがん治療(概要)
1.がん治療の4+1本の柱
がん治療。かつては「手術」を軸に、「化学療法(抗がん剤治療)」と「放射線療法」を加えてがん治療3本柱と呼ばれていました。いずれの治療法も年々確実に進歩しているのですが、近年、これら3大治療法に加えて、「がん免疫療法」が第4の治療としての地位を確立しつつあります。2018年ノーベル医学生理学賞受賞の本庶佑教授により開発されたニボルマブ(商品名:オプジーボ)という、「免疫チェックポイント阻害剤」に分類される薬剤が代表的です。さらに、がんの診断を受けたときから始まる、がんに伴う心と体のつらさを和らげる治療「緩和ケア」が確立され、さらに発展しつつある医学の1分野となっています。これらを含めると、現在のがん治療は、「手術療法」「化学療法」「放射線療法」「がん免疫療法」、そしてプラスワンの「緩和ケア」の5本柱があるということになります。厚生労働省より、がん診療連携拠点病院(東京都内に29施設のみ)の指定を受けている当医療センターでは、がんの種類別に治療専門医がおり、放射線治療医や緩和ケア医の協力のもと、この5本柱をフル活用したがん診療をおこなっています。
2.がんの集学的治療
このように、がんの治療には4+1の治療法がありますが、このうち「手術療法」「化学療法」「放射線療法」「がん免疫療法」の4つの治療法のうち2つ以上の治療を組み合わせることもあります。例えば、「まず化学療法と放射線治療を同時に行い、その後に手術をおこなう」といった治療です。 このような手術療法、放射線療法、化学療法、免疫療法を組み合わせた治療をがんの「集学的治療」と呼び、治療法を効果的に組み合わせることで、より大きな治療効果が期待できます。 当医療センターではこの「集学的治療」を積極的かつ日常的におこない、単独の治療法では得られない治療効果をあげております。逆に言いますと、当医療センターはがんの総合的な治療をみなさまに提供できるよう体制を整えております。
3.がんの「ステージ(病期)」に基づき、がん治療ガイドラインに則った治療
一般的に、がんの進み具合・病状を「ステージ」(病期)といい、がんが見つかった場合、いろいろな検査をおこない、ステージを決定し、これに応じた治療をおこないます。例えば胃がんであれば、①胃の粘膜表面に発生したがん病巣が、胃の壁を深部に向かってどれだけ侵食したか、 ②リンパ節への転移が生じているか否か、③他の臓器(肝臓や腹膜など)への転移が生じているか否か、を総合してステージが決定します。がん治療には、まずこのステージを正確に診断することが大切です。
がん治療では、がんの種類(臓器ごと)に治療の「がん治療ガイドライン」があります。各種がんの専門学会により明確に示された指針で、がん研究・治療の進歩に応じて適宜、改訂されます。当医療センターでは、このガイドラインの示すステージに応じた治療法選択を遵守し、「標準的治療」を適切におこなっています。
4.キャンサーボードについて
先に述べましたように、がん治療では、外科的治療・内科的治療・放射線治療などいくつかの治療法を組み合わせて行う集学的治療が求められます。キャンサーボードとは、それら各診療分野の専門性を尊重しながら、患者さんに適した治療方針を検討するための、診療科の垣根を越えたカンファレンスです。外科系・内科系・放射線科・緩和ケア科などの医師が集まり、意見を出し合い、がん治療方針について検討する場となります。さらに、拡大型のキャンサーボードでは、集学的治療のほか、緩和治療、療養生活支援、心理・社会的支援における患者さんの選択肢について検討を行い、医師、看護師、薬剤師、がん相談・支援部門担当といった多職種スタッフによる情報共有も行われています。当医療センターのようながん診療連携拠点病院においては必須とされるカンファレンスです。
5.各種のがん治療を担当する診療科
がんは、原則的に体内のどの部位(臓器)に発生したがんであるかによって、○○がんとの名称が決まります。厚生労働省と国立がん研究センターにより2022年5月に公表された「2019年の全国がん登録」によると、新たにがんと診断された罹患数は99万9,075人(上皮内がんを除く)。以下に、1年間の部位(臓器)別のがん罹患数(上皮内がんを除く, 人数)を見てみましょう。
上のグラフで示した罹患数の多いがんを担当している当医療センター診療科について、ごく簡単な紹介をさせていただきます。詳細は各科ホームページをご参照下さい。
消化器・一般外科
- 食道・胃・大腸・肝臓・胆道系(胆のう・胆管)・膵臓がんに対する手術や術前あるいは術後の化学療法・免疫療法
消化器内科
- 胃・大腸の早期がんに対する内視鏡的切除、胆道系がんに対するステント療法、肝臓がんに対するラジオ波焼灼療法、消化器がん全般についての化学療法・免疫療法
呼吸器外科
- 肺がん・縦郭腫瘍に対する手術。胸腔鏡手術が主体、ケースにより開胸手術。
呼吸器内科
- 肺がんに対する薬物療法(細胞障害性抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤、分子標的)
耳鼻咽喉科・頭頚部外科
- 甲状腺がんに対する手術
泌尿器科
- 前立腺・腎臓・膀胱がんに対する手術、化学療法・免疫療法
産婦人科
- 子宮・卵巣がんに対する手術、化学療法・免疫療法、遺伝性婦人科がんの遺伝学的検査
乳腺外科
- 乳がんに対する手術、化学療法・免疫療法、ホルモン療法、遺伝性腫瘍の遺伝学的検査
血液内科
- 悪性リンパ腫・白血病に対する薬剤治療、最新分子標的治療による多様な治療
以上、当医療センターのがん治療について簡単にお話をさせていただきました。がん診療連携拠点病院である当医療センターで、安心して治療を受けていただくことができましたら幸いです。